2017年1月、「夫のちんぽが入らない」という衝撃的な私小説で作家デビューしたこだまさん。
13万部も売り上げる大ヒットとなったので、普段は本を読まないという人でもタイトルを耳にしたことがあるんじゃないでしょうか?
僕はあまりのおもしろさに、感想記事も書きました。
そして読んだ人は分かると思いますが、こだまさん文才がすごいんです。
シリアスで重たい描写でも、その独特なワードセンスのおかげで時に笑いながら読めてしまいます。
そんなこだまさん、ブログやってるって知ってました?
僕の周りだけかもしれませんが、これ知ってる人がすごく少ないんですよ!
そして本と同様、ブログもめっちゃおもしろいんですよ!(語彙力)
僕は数年前にこだまさんのブログ「塩で揉む」を知ったとき、あまりのおもしろさに一気読みしてしまいました。
今でもお気に入りの記事は、ついつい読み返してしまいます。
今回はそんな「塩で揉む」から、個人的に特に好きなおすすめ10記事を厳選してみました。
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作家こだまさんのブログ「塩で揉む」おすすめ記事10選
01:歌広場として
同僚10人と食事に行き、3時間くらい飲んだり食べたりしたが、自ら口を開いたのは「ジンジャーエールお願いします」だけだった。
居ても居なくてもいいのだ。
帰り際、棚に片付けられていた全員分の靴を出して並べておいたら、年配の人が「こういう人をお嫁さんにすると幸せになれるよ」と若者にすすめてくれたけれど、私と結婚した人は現在精神科に通っています。
引用:塩で揉む 歌広場として
もう出だしの文から笑ってしまいますw
「居ても居なくてもいいのだ。」という淡々とした破壊力よ…!
02:歌い手さんの日常
子供の涎と鼻水で全身ぎとぎとになるので、夜勤が終わると銭湯に寄る。
その洗い場で待ち構えているのが「歌い手さん」である。
知的障害のある50代半ばの女性だ。どんなに晴れていても必ずビニール傘を持参し、「ここがワイの城じゃ」とばかりにそれを脱衣カゴにブスッと突き刺している。
こだまさんが銭湯で出会う歌い手さんのと日常。謎にほのぼのします。
03:どら焼きと乙女
空いていたベッドに笑い袋みたいなおばあさんが入った。
一日じゅうテレビを観ながら「ぐはははははは」と低音で笑い続けている。
看護師に「歯磨かないの?」と聞かれ「うん!」と明るく即答した。
「虫歯になっちゃうよ?」と促されても「いいの!」と言う。
おならもめちゃくちゃする。
園児が一瞬で老いたような、なかなか破壊力のあるおばあさんだ。
引用:塩で揉む どら焼きと乙女
「園児が一瞬で老いたような」というワードがお気に入り。
この記事は特に好きな記事です。
04:子供霊に囲まれる
森永卓郎似のおばあさんが「わたし仲村トオルが好きなんだ。トオルのドラマは全部観てる」と告白してきた。
トオル。下の名前で呼ぶんだ。
卓郎はTVガイドを隅々まで読んでいるので芸能人情報を熟知している。
「長谷川博己は際どい役にも積極的に挑戦するね。そういうチャレンジはいいことだね。これから伸びるよ」とも言った。
ご意見番だ。
「森永卓郎似のおばあさん」はブログ内にちょいちょい出てきますが、いいキャラしていますw
読んでてもうざったいんですが、憎めなくて好き。
05:澱みの源
朝、両親が車で迎えに来ることになっていたのだが、マッサンを観ながらのんびり朝食を食べていたら、もう来てしまった。
両親にとっての「朝」とはAM3:00~8:00を指すらしい。
引用:塩で揉む 澱みの源
こだまさんが入院先から初めて外出したときのことを書いた記事。
ご家族も病室の仲間も個性的です。
06:奴隷の運動
ボランティアのおじいさんは「これらの本をどうやって選んでいるか知りたい?」と勿体ぶり、「裏技なんだけど、アマゾンというサイトで星のついたやつを買っているんだよ、みんなには内緒だよ」と真顔で秘密を打ち明けてくれた。可愛らしかった。
引用:塩で揉む 奴隷の運動
こういう、入院日記の何気ない日常記事が心に残ります。
07:隣人との戦が始まった
ハガさんはナースコールを連打。「お便が出そう」と聞こえた。
いまの嘘であってほしい。
「車椅子でトイレに行く?ここでする?」の問いかけに、「ここでする」と即答。
少しでいいから迷ってほしかった。恥らってくれ。
このハガさんと「お便」のシリーズ大好きです!!(下品)
読んでるだけで臭ってきますw
08:「お便」に怯える日々
看護師が「また、お便?」と聞いている。
また、ということは深夜にもあったのか。
ハガのお便を100%把握したつもりでいたが、私は逃していたのだ。
こんなことなら何も知らずに寝ていたほうが幸せであった。
なんやかんやハガさんの便通事情を把握しつつあるこだまさん。
09:「お便」との別れ
ハガさんは私と同じ病気だった。
彼女は20~30年後の自分かもしれない。
邪険にしたり笑ったりしてごめんねと一瞬思ったけれど、やはり「お便」を他人事にされると笑ってしまう。
何といっても「お便」しすぎだ。
お便のハガさんとのお別れの記事。
前半はおもしろく、後半は胸にグッとくるお話です。
10:私は「かなりキている」
「手首のレントゲン、2年前のやつと比べてみたんですけど・・・」と言いにくそうな表情をしたので、「キてましたか」と訊いたら、笑いを噛み殺しながら「かなりキてましたね」と言った。
人の骨で笑うなよと思いながら私も笑った。
こだまさんの病気記事は、本来笑っちゃいけないはずなのについクスッときちゃいます。
ブログ記事を読んでみて
どうだったでしょうか?
自身のことなのに、まるで第三者の出来事を飄々と語るかのような文体と独特なワードチョイスがツボで、僕はいつも声を出して笑いそうになりながら読んでいます。
こういう「読み手を不快にさせず笑わせる自虐文が書ける才能」って憧れちゃいますね。
もちろん上であげた10記事以外…というか、全記事おもしろいのでぜひ読んでみてください。
そして実はこのブログ、こだまさんの作家デビュー2作目「ここは、おしまいの地」の発売に伴い、かなりの数の記事が削除されちゃっています。(僕の記憶が確かなら)
本来は、もっと記事数があったはずなんですよ。
2作目はエッセイ集なので、ブログ記事と本書とで被る部分が出てくるのが原因で非公開になったんでしょうね。
もっと読みたいって人はぜひ「ここは、おしまいの地
作家こだまさんの作品は試し読みできるよ!
【デビュー作】
【デビュー2作目】
「ここは、おしまいの地」試し読み
個人的には「モンシロチョウを棄てた街で」というお話がお気に入りです。